Rony’s 3rd BBS

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かく語りき - オラトリオ

2008/12/01 (Mon) 22:23:26

 おや、珍しいな。兵隊さんかい。
 あんただよ、あんた。
 ここは辺境だからな、へんぴな処に誰が好きこのんで機体整備になんか来るかい?
 来ないだろう?大抵は首都のポルドシティに流れるわな。こんな処に来るのは急なアクシデントで息絶え絶えになった新兵か、人付き合いを嫌う偏屈ってのが相場なんだが・・・・・・あんたはどっちだろうな?
 おっと気を悪くしないでくれよ?久々の客なんだ。ちゃんと整備してやるよ、その手に持ってる新型も含めて、な。
 人が来ないって事は新型に触れるチャンスも飛んでもなく低いって事さ。メカニックにしてみりゃ生殺しも良いところだぜ?全く。
 まぁその分偏屈から仕入れた興味深い話ってのだけは豊富だぜ?
 そうだな、つい先日聞いた話なんだが・・・・・・。

 これが良くできていると言うか、荒唐無稽と言うか。信じるも信じないもお前さんの勝手なんだが、まぁ聞いてくれよ。
 お前さんは生命体って聞いたら何を思い浮かべる?
 そうだな、俺達だって立派な生命体だな。カテゴライズすると、体や記憶素子で言うなら珪素生命体。はたまた情報伝達系で言うなら電子生命体とも言えるだろう。
 が、宇宙は広い。外宇宙には炭素を主体とした有機生命体ってのも存在する。
 生命の発生における珪素か炭素かって違いは生まれた環境の些細な違いに左右される程度のあやふやなもんだ。両方とも原子の持つ結合腕の数は多めだから優秀な素材になりうる。
 まぁ炭素の方が発展性は大きいがな。逆に不安定とも言えるか、はてさて。
 で、我々は珪素によって生まれた情報回路を金属で覆い隠し、そこに電子的パルスを流すことで生じる自己認識を以て「我思う、故に我有り」な一本の葦なのだが。
 そこでお前さんはどう考える?
 俺達光の民とドレットノートに幽閉された悪魔軍の違いについてだよ。
 そもそも何で悪魔軍と天使軍は争っている?前世紀から続く抗争?その発端は何だったんだ?
 それぞれ別々の場所で生まれた奴同士が、何で追放だ報復だしないといけない?そんなの自分の領地だと一線を引いてしまえば万事解決だ。
 つまり、俺達と悪魔軍とは本を正せば同一の存在から分化したものじゃなかろうかってことだ。
 この考え方に対して、メカニックの視点から言わせて貰えば俺は別段反論はしないね。確かに言われてみるまで気が付かなかったが、あまりに構造が似通っている。仕舞いには互いの種族枠を超えたアセンブリが可能だって事も証明されているからな。同一の源から分化したって言うなら説明は容易だ。
 じゃぁ、分化する以前はどんな生活を?
 ここに来て矛盾が生じる訳だな。同一存在から分化したって言う説が浮上しなかった事も不自然じゃない。何故って?そんな証拠はハード的にもデータ的にも一切発見されていないからだ。

 お互いの構成部分をすげ替えることまで可能な生命種が、全く別の発生をしたとは考えにくい。あったとしても天文学的数値を遙かに超えた偶然が必要だろう。
 さっき証拠が一切発見されていないと言ったな。それはこれらに関する事だけじゃない。
 ある時を境に、我々の創世に関する情報や現在に至る進化の道程に関する資料はすっぱりと抜け落ちてしまっているのさ。
 まるで、今の有り体のままで突然生まれ出たようにな。
 で、だ。ここからは奴さんから聞いたそのままを言うぜ?

 「我々は、元より外宇宙の有機生命体である造物主が作り上げた自動生成プラント副物主によって造られた」
 「造物主は副物主を外宇宙の脅威に対する決戦兵器として創造し、それを放った」
 「副物種は効率競争により自己進化をする事を求められ、多彩な組み替えを好み不安定ながらも戦力を自在に変化させる副物主と、同一企画を大量に生産し変化に乏しいながらも質実剛健な副物主とが作られた」
 「外宇宙の脅威とやらはそれら副物種が生み出した兵隊によって退けられ、役目を果たした副物主は自己に備えられたアポトーシスに準じて自壊した」
 「残された兵隊達は途方に暮れながらも残された副物主の残骸から多くを学び取り文明を築き上げた」
 「やがて、それらは争いを始めた」

 ってなわけだ。どこまで本当でどこまでが虚構なのかは俺にも判らん。判断する材料があまりに少ないからな。
 この話を持ち出した奴も相当の偏屈だからなぁ・・・・・・。
 おっと、もう行くのか?
 新型、存分に堪能させてもらったよ。また珍しいパーツを見つけたら立ち寄ってくれ。

 その時には、別の話をしてやろう。
 

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